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 今年もアカデミー賞が発表され、3本もエントリーしていた日本映画の中で、ゴジラと宮崎駿が受賞し、一番取って欲しかった Perfect Days は外れてしまいました。

 小津映画は、フランスでは熱心なファンがいても、米国では、黒澤映画のようには人気になりませんでしたが、上記の3本も、視覚的な効果の大きい方がアカデミー賞向きだったのかなぁと思ってしまいました(いくら Wim Wenders とはいえ、あそこまで地味な画が米国の映画賞でノミネートされたことの方がむしろ驚かれるべきことなのかも知れませんね。)。

 Perfect Days は、どこからどこまで実に素晴らしかったですが(映画の本編が余りに素晴らしかったために、この画について語っているYouTube動画を未だにあれこれ見てしまうのですが、明後日の方を向いていたり、主人公の役名がなぜ西山なのかすら分かっていない、前提となる教養に欠けるものが多過ぎますね。)、たとえば、Van Morrison の最初のソロアルバムの一曲目に入っていた Brown Eyed Girl が流れてきた時には、この曲を学童の卒所パーティのBGMに選んだ思い出もあって、心が特別な動き方をしました。

 もちろん、音楽についても、知らないものがいくつもありましたが、特に、一番新鮮だったのは、役所広司が夜寝る前に文庫本で読んでいた。幸田文の「木」でした。もちろん、映画の主題とも被っているのですが、そこを離れても、解説にあるように、文章自体が実に名文で、読んでいて滋養になっていることがしっかりと感じられます。

 映画も本も、使い捨てられないもの、何度も帰ってくることのできるようなものに触れたいと改めて思いました。